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工藤 和彦さん Vol.2

自分で作ったモノを人にあげることの喜び。
それが、自分の原点になっていると思います。

工藤和彦さん

黄粉引、粉引

1970年 神奈川県生まれ。
1988年 信楽焼神山清子先生、神山賢一先生に師事。
1996年 北海道剣淵町に自宅兼工房を築窯、独立。
2002年 旭川市に移住。
2003年 黄粉引平片口鉢が栗原はるみ大賞受賞。

焼き物の材料は、地球からの“借り物”。
「蹴ろくろ」を使うのも、地球への感謝の気持ちから。

窯を立ち上げたときは電動ろくろを使っていましたが、今は自分の足の力だけでろくろを回す「蹴ろくろ」を使っています。きっかけは、新婚旅行で訪れたインドでの体験。ヒンデゥー大学で焼き物をやっていると聞いて見学に行ったんです。そこでは皆、蹴ろくろを使っていました。「日本で焼き物をやっているんなら、俺たちに見せてくれ」って言われて、ろくろの前に座ったのですが、蹴ろくろがまったく使えなくて……とにかく恥ずかしい思いをしましたね。そのことが自分の心の奥深くに残ったんだと思います。

帰国して自分で土を掘るようになってから、“自分の力”で物を作ることの大切さをしみじみ考えるようになり、蹴ろくろに転換。確かに、電力を使わない分、体にも(とくに股の部分……笑)負担がかかるし、時間もかかります。でも、コストのかからない土を大量に掘って、人や機械に任せて大量に作って、収益を上げる――そういった大量生産・大量消費は、僕の仕事じゃないなぁと思ったんです。自分が掘れる分だけの土を使って、自分ができる分だけの焼き物をつくる。出来上がる品物としては少ないかもしれませんが、それでいいかなと思っています。地球からの借り物でモノをつくるわけだから、地球への負担も最低限に抑えたい。そのために一番いい道具が、蹴ろくろだったわけです。

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土の持ち味を最大限に引き出してあげれば
自然とそこに命が吹き込まれます。

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蹴ろくろを使い始めて、そろそろ20年になります。電動ろくろ時代は安いものを大量に作っていたから、最初のうちは蹴ろくろで同じことをやろうとして、痛い思いをたくさんしました。座るところの構造や理由も知らないまま、がむしゃらにろくろを回して、お尻の皮がむけてしまったことも……。ところが、独学ながら何十年も続けて自分の型ができてくると、それが今度は作風に表れてとてもいい味になるんです。今では電動ろくろを使うと逆に違和感を持つほどになりました。

蹴ろくろは作品づくりに手間がかかると思われがちかもしれませんが、意外と手数が少ないんです。それが気に入っていますね。つまり、自分のペースにあわせて、ろくろの動きをゆっくりにしたり、早めたりできる。最短距離で、思い描いていたものが作れるわけです。手数が少ないということは、器にかける負担も少ないので、本当にいいものができるんですよ。中華料理で野菜を炒めすぎるとしんなりして美味しくなくなりますよね。少ない手数で、しゃきっと仕上げる……それと同じで、土の持ち味を活かすには手数が少ないのが一番いいんです。

僕は器一つひとつに命が宿っていると思っています。自分が命を吹き込むのではなく、自分とは別の命であって、勝手に生まれて出て来たものだという感覚です。自分で土を掘っているからこそたどり着いた心境なのかもしれないなあ。土が形になり、焼けて固まり、いずれ土に返っていく。そういう循環に自分がたまたま関わっている、という感じです。般若心経の「不生不滅 不垢不浄 不増不滅」という教えにもあるんですが、この世の中のものは増えたり減ったりしない――そういった本質の部分を、焼き物を通して学んでいますね。

工藤和彦さんの作品、インターネットでもご購入いただけます。

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右都和より

作家・工藤和彦さんの人となり Vol.2です。工藤さんの器に対する考え方をお伺いしました。いかがでしたか?
新婚旅行で行ったインドで蹴ろくろがうまく使えなかったというお話、恥ずかしさ、悔しさ、情けなさがあったと言います。そして自分でやろうとしたとのこと。文中ではお尻、とありましたが、それだけではなく、いろんなところ?が相当ヒドイ状態になったそうです。そんな蹴ろくろを通じての器は、「地球から土を借りている」という表現になりました。器に命があるとすると、工藤さんは、地球と器を使う私たちの媒介、ということになるのでしょうか。そんな作家さんの気持ちを思いながら食卓で使う器は、自分やご家族、お客さまへの、いつもと少し違う、おもてなしになりそうですね。
そんな工藤さんの器をご覧いただける日が近づいてまいりました。

日時:9/11(木)〜23(火) 11:30〜21:00
場所:東京神楽坂 『ギャラリー&カフェ 帝 -MIKADO-』
工藤さん在廊:9/11(木)、12(金)

ぜひ直接お話を聞いてみてください!

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