2015/3/26(木)~4/7(火) 竹内 瑠璃 色絵細描展『瑠璃、という名前の森』
神楽坂「ギャラリー&カフェ 帝(MIKADO)」
京都祇園「ギャラリー かさい」で
個展を開催します。
九谷焼の色絵細描の作家、竹内 瑠璃(るり)さんの展覧会です。
日時■2015年3月26日(木)〜3/31(火)
場所■東京神楽坂 ギャラリー&カフェ 帝(MIKADO)
時間■11:30〜21:00
瑠璃さん在廊日■3/26(木)〜3/29(日)
日時■2015年4月2日(木)〜4/7(火)
場所■祇園 ギャラリーかさい
時間■12:00〜17:30
瑠璃さん在廊日■4/2(木)〜4/5(日)
竹内 瑠璃 色絵細描展『瑠璃、という名前の森』
花器、コーヒーカップ、香合、水滴、香水瓶…
ひとつひとつに、植物や動物の物語が描かれています。
そしてその生き物たち、
たとえば春に香合にいた鳥は、
夏にはコーヒーカップでさえずっているように、
季節や場所を変えて、作品の中で楽しんでいるようです。
九谷の色絵細描の作家である竹内瑠璃さんが思い、描き出すのは、
そんな生き物たちが暮らす森のような世界。
花瓶という大木には、いろんな動植物が集まっていそうですね。
そう、まさに『瑠璃』という名前の森なのです。
繊細な技法と色使いが生み出す世界は、
米国ニューヨークでは、Microscopic Craftと呼ばれ、
〝微細の芸術品〟と言われています。
このたび、東京は神楽坂、京都は祇園で
『瑠璃の森』をご覧いただけることになりました。
つるばらの新作を含めて、
どうぞ、ご自身でお楽しみください。
瑠璃さんの作品の色絵はとにかく細密。
九谷焼の伝統工芸士の方々が、口を揃えて評価するその絵付けの技術、世界感、
そして手びねりの感覚は、本当に絶品です。
美術品としての価値はもちろんですが、
「思い、遊べる」という点においては、こんな作品、今までになかったのではないでしょうか。
個展に先だって、一部をご紹介いたします。
①
唐草の香水瓶「翠聲(すいしょう)」(写真右奥)
幅6.4×高さ19cm
「長く描き続けている緑の唐草模様は、私の中で定番化しつつある模様の一つです。緑のツルバラを描いた面の余白は金で塗り、ツルバラの線の美しさを強調してみました。唐草とツルバラが引き立つように、フォルムに合わせて金で描いた七宝の小紋柄を入れました」
②
山吹の水滴「山吹」
幅6.5×高さ5.4cm
「山吹がとにかく描きたい!と思って絵がいたんです。山吹は、日本的で清楚なイメージ。
万葉集にも詠まれ、日本の文化に深い関わりを持っているじゃないですか。そんな気品を、いつか自然に表現できたらいいなって思います」
③
ツルバラの水滴「九重(ここのえ)」
幅7.8×高さ6.3cm
「このツルバラはお昼間ですね。その花びらが何重にも重なっている様子を作品の名前に込めました。重なり方によっても変わる濃淡の美しさが、立体感があって好きなんです。上に描いているのは吉祥文様の一つで、七宝の小紋柄。真上から覗いても、お花模様が見えるように換描きました」
④
蘭とリスザルの香水瓶「麗(うらら)」
幅5.5×高さ11.5cm
「南国の楽園シリーズと名付けてみました(笑)。ぎらぎらの太陽の下で咲く南国の花、蘭。“華やかな色を使って絵付けをしてみたい!”という思いから、2014年から黄色を使い始めました。アーモンド型のような縦長の美しいシルエット、バナナを狙っているような、リスザルの眼力にも注目してあげてください。」瑠璃さんの南国シリーズ、組み合わせてみると動物達の歌声や話し声が聞こえてくるかもしれません。
⑤
カトレアとサイチョウの香合「麗(うらら)」
幅4.6×高さ6.8cm
こちらも南国の楽園シリーズです。「くちばしが特徴的なサイチョウ。上を向いているだけではなく、ほんの少し首をかしげているんです。太陽の強い日差しを感じて欲しい、という思いから、こげ茶色のアクセントを入れてみました。明るい色の中に暗い色を入れることで、ジャングルの中にいるような様子が表現できたらな、って」南国のゆったり、そして少しねっとりとした風の中に大きく咲くカトレアとなんともお似合いです。
⑥
蘭のワインカップ「麗(うらら)」
幅7.8×高さ9.3cm
南国の楽園シリーズですね。「より一層上品になればと思い、細い持ち手にも絵柄を描きました。こげ茶で描かれた模様も、花になっているんです。楽園のいろんな花の上をひらひらと舞う蝶が、描いていて羨ましいです(笑)。口の縁は、金色で描いた定番の七宝の小紋柄ですね」
⑦
竹の香合「望月(もちづき)」
幅9×高さ10.5cm
「満月の夜に、まるで照明のように明るい月明かりに照らされた竹林の情景を描いてみました。葉脈と輪郭を金で描くことで、夜に竹が輝き浮き立つように見えればいいな、と。」そよ風に揺れているような、しなやかな枝ぶりは、サササ…と音が聞こえるようです。蓋のつまみの裏も、ぜひお楽しみください。埋め尽くされた七宝の小紋柄に思わず息を呑んでしまいます。
⑧
桜と鳥の香合「芳野(よしの)」
幅3.4×高さ5.3cm
「奈良・吉野の山桜を描きました。そして、そのままの“吉”ではなく、桜の香り漂う情景をイメージして、“芳野”としたんです。これは香合の箱の部分は素地の職人さんなんですが、鳥の部分の手びねり(造形)は私です。手びねりも絵付けもそうなんですが、師匠である山本長左先生から、“花や鳥を器に取り入れるときは、お客様が見た時に活力がある方が嬉しい”という言葉をいただいています。それを強く意識して、鳥を作りました。しっぽでも力強さを表現できるように考えながら、鳥の形をⅤ字型につくることで、デザイン的にも変化をつけています」
いかがですか?手のひらにすっぽり収まるようなこの小さな作品の中にも、瑠璃の森の息づかいがしっかり聞こえてきます。まるで鳥が本当に木にとまっているような香合は、蓋を開けても桜尽くし。隅から隅まで、芳野の情景をお楽しみください。
⑨
鯉とモミジの香合「薫風」
幅6.5×高さ5.4cm
「爽やかな新緑がテーマです。新緑から濃い緑へ変わる季節、清らかさと力強さを鯉に託しました(笑)。蓋を開けると、普段ゆったり泳いでいる鯉も見ていただけます。写真ではわからないですが、モミジの葉脈と内側の鯉のウロコ部分は同じ色を使っているんです。細すぎると茶色っぽくなり、太すぎると黒っぽくなるので、絶妙な筆加減でモミジを育てました。」裏面の縁取りには金の青海波の模様があり、鯉がはねた時のきらきらした眩しい水面が思い浮かびます。
⑩
ツルバラのコーヒーカップ「弦月(げんげつ)」
幅15.3×高さ7cm
「どこからを見ても楽しんで欲しいという想いで、絵柄で埋めつくしました。淡いグレーは、弦月(半月)に照らされた、夜のツルバラの色。大きさも、小さすぎず、唐草模様とのバランスを見ながら描いています。カップを持ち上げた時に「ここにもツルバラ!」って驚いていただきたいので、ソーサー中央にもツルバラが咲いています」
⑪
ツルバラの香水瓶「九重(ここのえ)」
幅8.5×高さ9.2cm
「もともとは耳付きの作品に絵付けをしてみたい、という思いから耳の形にもこだわったつもりです。目立ちすぎず、エレガントな耳を意識しました。蓋は、尾がツンと空を向いたV字型の手びねりの鳥。よく探してみないと見逃すようなミツバチが2匹、ツルバラと遊んでいます。 」そんな瑠璃さんの作品の驚くべきところは、蓋の裏面のような、使わないと見えない部分までぎっしり詰まった絵付けにも、ぜひご注目を。この香水瓶には、金の七宝の小紋柄が敷き詰められています。
⑫
野ウサギと春草の小箱「長閑(のどか)」(写真手前)
幅8.5×高さ5.5cm
「なぜか無性に春草と野ウサギが描きたくなってしまって。今までの作品と違って、細かい毛並みを表現するために、洋絵具で描いてるんです。不揃いで野性的な毛並みをは、あえて新しい筆を使って表現しました。このふわっとした毛並みは、線を何重にも色を塗り重ねて表現。最後に色の濃度を上げて描くので、躍動感ある毛並みが生まれたと思っています。タンポポ、スミレ、つくし、菜の花など、春の野原で出会って「あ…」と思ったような場面を小箱に描いてみました」
こちらの作品もまた、外からは一見わからない部分も、細かく遊んでおられます。菜の花の側で遊んでいる2匹のミツバチ、スミレの近くを散歩する1匹のアリ、春の季節の軽さを感じるモンシロチョウ…。こんな場所に出会うのは、きっと「瑠璃の森」に迷い込んだ時なのでしょう。
⑬
蘭とカメレオンの香合「麗(うらら)」
幅4.2×高さ5cm
「南国の楽園シリーズ。カメレオンの手びねりは、初めての挑戦です。爬虫類は興味がある生物で、リアルでもなくデフォルメでもなく、可愛らしさをどう作り出せるかが愉しかったです。一見柔らかな表情のカメレオンですが、蓋をあけてみると表情が一変。そこには大好物の蝶を狙う、本性の顔が…。 というのはカメレオンから見た視線ですが、蝶の目線から見てみると、カメレオンに狙われているのに気づかず呑気に飛んでいるんです」
⑭
月琴と唐子の置物「和楽」(写真右)と
横笛と唐子の置物「和楽」
幅5.8×高さ7.8cm
「九谷の尊敬する宮本直樹先生の影響なんですけど、動物の中でも、人間の造形がいちばん好きなんです。表情はもちろん、ポーズというものをつけられるから。いろんな情景を想像しながらポーズや表情を考えるのが本当に愉しいです。この楽器を持つ唐子は、ペアにすると、少しの顔の動きと阿吽の呼吸で演奏始める瞬間、かな?衣装はおめでたい模様尽くしで、ベースの模様は桃の花。赤い模様は、青海波。金色の模様は、菊の花。作品をいろんな角度からのぞき込まれてもがっかりされないように、細かいところまでこだわってるつもりです。靴の底もそうで、月琴を持つ唐子は、片足だけ塗っていないところがるんですが、そこは地面についているところ、とか。そんな細かいところ、どうでもいいですよね?(笑)」
⑰
ツルバラの飾壷「弦月(げんげつ)」
幅12.8×高さ23.9cm
「普段は大きななものはめったに作らないので、今回のメイン、でしょうか。素地職人さんが作ってくださった花瓶の縦のラインの美しさに惚れてしまって、そのラインを生かして絵付けをしたいと思ったんです。下の部分は高い箱の上に乗せて描いたりと、描く順番をしっかり考えながら試行錯誤で仕上げました。唐草の葉脈までしっかり描ききれたと思います。また、この絵付けの途中に偶然に出会ったダークグレー。これを贅沢に使って、柔らかさと、凜と立つ気品を意識しました。」
瑠璃、という名前のこの森では、この弦月に照らされた花瓶は、まさに森のシンボルツリーであり、森に生きる動物や植物たちの支えになっているのではないでしょうか。
竹内瑠理さん
奈良県大和郡山市生まれ。
OLを経験ののち、作陶の道へ転向。
2006年 京都伝統工芸専門学校(現・京都伝統工芸大学校)卒
山本長左氏に師事、4年間陶磁器絵付け(染付)を学ぶ
2010年 石川県立九谷焼技術者自立支援工房にて3年間制作活動を行う
2013年 石川県小松市にて独立
そんな瑠璃さんの人となりはこちら。
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竹内 瑠璃さんの人となり